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クロエサングラス2119偽物見分け方編集

「いや、あのハサミだけが元のままだった。ひょっとしたら、またその状態になるかもしれん」 「ならば『ウェイカー』を使えるな」  牧原は唇を噛《か》んだ。射出器は破壊されたが、ダーツは無傷で残っている。不完全変態の菅野広志に、このダーツをつき刺すことは可能だろう。ただしその場合、菅野は死亡する。  だが、そのほうがもはや、菅野にとっては幸福かもしれなかった。菅野には、ナイトメアであったときの記憶が、わずかかもしれないが残っているようだ。たとえ薬のせいだとしても、自分が怪物に変身し、殺戮《さつりく》をおこなったという苦しみからは逃れられない。 「一佐——」  バリケードの後方で無線による地上との交信をおこなっていた兵士がにじりよった。 「上から、指向性爆薬の使用を検討してはどうかといってきました」 「まだ早い」  剣持はいった。兵士はひきさがり、小声で通信を始めた。  牧原は剣持を見やった。この地下で爆薬の使用は危険な事態を招く。密閉された空間と同じ店内では、たとえ破砕手榴弾一発であっても、内部にいる人間の鼓膜や呼吸器に激しいダメージを与えるのだ。その上、ビル全体の倒壊をひきおこしかねない。 『エレクトリック・メーター』が地下にあるせいで、秘密保持は比較的容易になっている。が、ナイトメアに対する攻撃方法も限定されていた。  牧原は足もとの未知に目を移した。目を閉じている未知は、年相応の少女の顔をしている。 「牧原」  剣持が声をかけた。 「陽動してくれ」  牧原は小声でいって、腰にさしこんでいた射出器をひき抜いた。壊れた本体からダーツだけをとりだした。 「ナイトメアは動くものに対して攻撃をかけてくる。そっちが注意をひきつけてくれれば何とかなるだろう」 「どこにそれを使うんだ」
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